年収500万円から年収800万円の手取りを計算。税金の増え方がエゲツないってホント??

新卒で会社に勤め、年収は毎年少しずつ増えているハズなのに、手取りは変わっていない気がする…
そんなふうに感じたことはありませんか?

額面給与が増えれば累進課税で控除されるお金も増えるからですが、控除されるお金がどのくらいで、手取りはどの程度になるのか、、把握をしている人はなかなか居ないと思います。

特に、年収600万円から年収800万円の間は累進課税の上昇が激しく、手取りはあまり増えないという話も聞きます。

そこで今回は、社会保険料や所得税、市町村民税の計算方法を調査し、月給や賞与、年収の控除額と手取り額を明らかにします。

年収500万円〜800万円の控除と手取り

今回は手取りがあまり増えないと言われる年収600万円〜800万円の範囲を少し広げ、年収500万円、600万円、700万円、800万円の時の控除額と手取り額を計算します。

まず、下記のように設定をします。

  • 年に2回、賞与(ボーナス)が支給される。
  • 1回のボーナスの支給額は3ヶ月分の月給とする。
  • 扶養家族はいないものとして計算。
  • 年齢は20代〜30代とする。

そうすると、月収と賞与は以下の通りです。

年収 月給 賞与(1回あたり)
500万円 27.8万円 83.5万円
600万円 33.3万円 100.0万円
700万円 38.9万円 116.5万円
800万円 44.4万円 133.5万円

控除額を計算

設定した月給と賞与を使い控除額を計算します。
一般的に控除額には3つの名目があり、厚生年金などの社会保険料、所得税、住民税です。そのうち社会保険料は所得税や住民税を計算する際に使うので、先に社会保険料を計算します。

1.社会保険料の計算

会社員の場合、社会保険料は厚生年金保険料と健康保険料、介護保険料(40歳以上)で計算されます。今回は年齢を20代〜30代にしたので、介護保険料はかかりません。

厚生年金保険料と健康保険料の計算には、標準報酬月額という数字を使います。これは基本的に4月〜6月に支給された月給の平均値を、細かく段階分けしたものです。例えば月収が21万円〜23万円の場合、標準報酬月額は22万円となります。

この標準報酬月額毎に厚生年金保険料と健康保険料が細かく設定されており、通常は4月〜6月の月給の平均値を計算したら標準報酬月額表を使って厚生年金保険料と健康保険料を確認すれば良いです。
標準報酬月額表(H29年度)

年収500万円〜800万円の月給にかかる厚生年金保険料と健康保険料は下記の通りです。

年収 厚生年金保険料 健康保険料 合計
500万円 25,620円 13,874円 39,494円
600万円 31,110円 16,847円 47,954円
700万円 34,770円 18,829円 53,599円
800万円 40,260円 21,802円 62,062円

1回の賞与から控除される厚生年金保険料と健康保険料は下記の通りです。

年収 厚生年金保険料 健康保険料 合計
500万円 41,126円 56,730円 97,856円
600万円 48,559円 56,730円 105,289円
700万円 56,982円 56,730円 113,712円
800万円 65,901円 56,730円 122,631円

賞与から控除される社会保険料も給与と同様に、1回の賞与の金額を標準報酬月額表に当てはめて決まります。健康保険料は605,000円以上で頭打ちになるため、年収500万円も800万円も同じ金額です。

ちなみに平成14年以前まで、賞与にかかる社会保険料は一律1%だったそうです。1%なら年収800万円の場合でも13,350円/1回になります。現在の10分の1程度です。いかに社会保険料が値上がりしているかの裏付けになります。

年間の保険料にすると下記の通りとなります。

年収 年間の厚生年金保険料 年間の健康保険料 年間の合計
500万円 420,900円 248,741円 669,641円
600万円 486,780円 299,282円 786,062円
700万円 530,700円 339,913円 870,613円
800万円 596,580円 393,427円 990,007円

年収に占める割合にすると、、
年収500万円:13.4%
年収600万円:13.1%
年収700万円:12.4%
年収800万円:12.4%

ほぼ横ばいですが年収が増えるほど割合わ少ないことが分かります。年収600万円〜800万円の累進課税の上昇は激しいという仮説を立てましたが、社会保険料については当てはまらないようです。

ちなみに、社会保険料は会社と従業員で折半する事になっており、上記は折半後の金額です。会社が支払っている分の社会保険料も加えると、年収の25%〜30%にも及ぶ事になり、社会保険料が大変な負担である事が分かりますね。

2.所得税の計算

続いて所得税を計算します。所得税は月給と賞与にかかりますが、それぞれ計算の仕方が異なります。

まず月給にかかる所得税を計算します。
額面の支給額から先に求めた月の社会保険料を引きます。そして引いた後の金額を「給与所得の源泉徴収税額表(平成29年分)」に当てはめて所得税を求めます。源泉徴収税額表は非常に細かい階層で所得税を定めています。また、扶養家族がいる場合の金額も書かれています。

年収500万円〜800万円の月給にかかる所得税は下記の通りです。

年収 ひと月の給与の額面 所得税
500万円 278,000円 6,110円
600万円 330,000円 7,820円
700万円 389,000円 11,360円
800万円 444,000円 15,040円

次に、賞与にかかる所得税を月給を元に計算をします。
賞与支給月の前の月に支払われた額面の給料から、その月に社会保険料として控除された分を差し引いた金額を計算します。求めた金額を「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(平成29年分)」に当てはめ、賞与にかかる所得税の税率を導きます。賞与の額面から社会保険料として控除された分を差し引いた金額に先に導いた税率をかけて出た金額が賞与にかかる所得税です。

年収500万円〜800万円の賞与にかかる所得税は下記の通りです。

年収 1回の賞与の額面 所得税
500万円 835,000円 34,101円
600万円 1,000,000円 61,260円
700万円 1,165,000円 118,946円
800万円 1,335,000円 163,564円

月給と賞与にかかる所得税を合わせた、年間の所得税は下記のようになります。

年収 年間の所得税 年収に占める所得税の割合
500万円 141,522円 2.8%
600万円 216,360円 3.6%
700万円 374,213円 5.3%
800万円 507,608円 6.3%

年収に占める所得税の割合に注目すると、年収500万円で2.8%だったのが、年収800万円では2倍以上の6.3%にアップします。つまり年収の増加に伴い、年収の増え方よりも課される所得税の増え方の方が急であるという事です。
これは年収600万円〜800万円の累進課税の上昇率は激しいという仮説の裏付けになりますね。

3.住民税の計算

住民税の額は前年の年収で決まります。また社会保険料や所得税と異なり賞与にはかかりません。

まず住民税を計算するためのベースとなる「課税額」を計算します。課税額は前年の年収の額面から「給与所得控除」の額、社会保険料、扶養控除、生命保険料などの額を控除した金額となります。
課税額に10%を乗じ、均等割額を加え、調整控除額を差し引いた金額が年間の住民税になります。

少し複雑なので詳しい計算方法は下記のサイトを参考にしてください。
※住民税額の計算方法|住民税の解説サイト

年間の住民税を12等分した金額が、我々が毎月支払っている住民税の金額です。

年収500万円〜800万円にかかる住民税は下記のようになります。

年収 住民税 ひと月に支払う住民税 年収に占める住民税の割合
500万円 248,535円 20,711円 5.0%
600万円 316,893円 26,407円 5.3%
700万円 392,438円 32,703円 5.6%
800万円 470,499円 39,208円 5.9%

子供の分の扶養控除や配偶者控除が無い条件で計算をしています。それらの控除があれば年間で数万円以上安くなります。
年収に占める割合を見ると、少しだけ年収による傾斜の違いがあります。

年収にかかる控除額の合計

社会保険料、所得税、住民税を合わせ、年間に控除される金額を計算すると、下記のようになりました。

年収 控除額 年収に占める控除額の割合
500万円 1,059,699円 21.2%
600万円 1,319,315円 22.0%
700万円 1,637,264円 23.4%
800万円 1,968,114円 24.6%

およそ年収の20%〜25%が控除され、手元に来ないと言う事が分かりました。
年収に占める控除額の割合に注目すると、年収が増えるにつれ控除額の割合が大きくなる事が分かります。ただ、激しいと言える程の増加ではなく、最初に立てた年収600万円〜800万円の累進課税の上昇は激しいという仮説を裏付けるにはパワー不足かと思います。嬉しい事ですが。

年収500万円〜800万円の手取り

上で計算した控除額を使って手取りを計算しました。

額面年収 手取り年収 月の手取り 1回の賞与の手取り
500万円 3,940,300円 211,684円 703,042円
600万円 4,680,684円 250,815円 833,451円
700万円 5,362,735円 291,337円 932,341円
800万円 6,031,885円 327,689円 1,048,804円

まとめ

年収600万円〜800万円付近は昇級しても手取りが増えている感覚が少ないという話題を元に、年収600万円〜800万円の累進課税の上昇率は激しいという仮説を立てて検証をしました。

結果、確かに年収が増えるほど年収から控除される金額も大きくなりますが、その割合は年収500万円〜800万円で5%程度の差しかなく、仮説を裏付けるのに十分な結果とはなりませんでした。

ただし、あくまで今回の設定での結果なので、場合によってはもっと大きな差が生まれる可能性があります。例えば、給与と賞与の割合や支払額に波があると同じ年収でも多く控除されるケースがあります。
実際に僕はこんなケースを味わいました。
知らないと損する税金の仕組み。僕が残業代の85%を税金で取られた話し

年収が増えたのに手取りが増えない感覚になる理由として、新卒入社の若手だからという場合も考えられます。住民税は前年の所得を元に額を決めるため、学生時代にアルバイトで100万円も稼いでいなかった場合、社会人1年目の住民税は僅かです。しかし2年目になると1年目の所得を元に額が決まるので住民税が大幅にアップします。

いずれにしても、年収の20%〜25%は手元に入らない訳なので、無駄遣いしないためには手取りの年収で使えるお金を考えるべきですね。。

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