30代 独身サラリーマン。ローンを組んでマイホームを買うのが嫌な理由 後編
ローンを完済する頃にはマイホームの資産価値が無くなっている…
ローンを払い終わるのが30年後だとして、築30年の家は資産的にどの程度の価値が残っているでしょうか。
まず法律の側面から言うと、一般的な木造住宅の資産価値は20年程度でゼロになります。木造住宅における税法上の耐用年数が22年と定められているからだそうです。ちなみにマンションの耐用年数はRC(鉄筋コンクリート)造で47年・鉄骨造で34年だそうです。
では実際に売買される時の査定額はどうでしょうか!?
三菱UFJ不動産販売のサイトによると、査定額は税法上の耐用年数の影響を受けるので、木造戸建住宅は築25年程度で査定額がゼロになるケースがほとんどだそうです。
もちろん、耐用年数が経過したからと言ってすぐに住めなくなる訳ではありませんから、家としての価値は家主に提供し続けるでしょう。しかし、家を売ろうとした場合は査定額が取引の基準になるので、築20年の家の売値は実質、土地代だけとなります。ひょっとすると上物(すなわち家)を取り壊して更地に戻すための費用の分、売値が下がるかもしれません。
35年ローンで家を買って築20年といったら、あと15年もローンが残っています。それなのに家自体の査定額がほとんどゼロだなんて、酷すぎませんか…?
家を売る事になった際に売値がローンの残高を下回れば、当然、住む家が無くてもローンだけは支払い続けなければいけません。
マイホームは建てる時以外にもお金がかかる
マイホームは建てて終わりではありません。自動車と同じで、所有しているだけで毎年出費が発生します。例えば「固定資産税」です。固定資産税は自動車税のように毎年徴収されます。
税額は土地と建物の評価額で決まり、減税措置が受けられます。例えば、土地2,400万円、建物2,000万円の家を建てたとします。すると固定資産税は以下のように計算されます。
土地に対する固定資産税
2,400万円 × 1/6(200平方メール以下の小規模住宅用地に対する減税措置)× 1.4%(一般的な標準税率)= 5.6万円
建物に対する固定資産税
2,000万円 × 1.4%(一般的な標準税率)× 1/2(新築戸建の場合は3年〜最大7年間、半額に減税される)= 14万円
家を建てて1年目の固定資産税は 19.6万円 になります
高いと思いませんか? 大卒新人の手取り月給くらいあります。所有しているだけで毎年この額を支払わなければいけません。なお、建物にかかる固定資産税は、建物の築年数が増えて評価額が下がる度に下がりますが、土地に対する固定資産税の額は変わりません。
マイホームを維持する為には、固定資産税以外にもお金がかかります。住宅の保守費用です。
例えば屋根や外壁は10年〜15年を目安に塗り替えが必要になります。その際の費用は建坪30坪〜40坪で、100万円〜200万円(塗料の種類による)です。場合によっては足場代でプラス数10万円が必要です。
10年に一度、屋根と外壁の塗り替えで150万円かかるとします。するとマイホームの1年あたりの維持費は固定資産税と合わせて 34.6万円 です! 毎月のローンを支払って、さらに年間35万円のお金をマイホームの為に捻出しないといけないのですよ!
賃貸物件と同じ金額なら住宅ローンを支払う方がお得だと言われる事がありますが、マイホームの場合は住宅ローンに加えて年間35万円もの維持費がかかることを忘れてはいけません。
※こちらのサイトを参考にさせて頂きました。
外壁塗装の相場価格を解説|費用、料金、見積もりについて
もともとマイホームは天才が考えたドル箱ビジネスモデル
こちらの記事にも書いた通り、日本ではマイホームを購入する人の方が賃貸物件に住み続ける人よりも多数派です。つまり普通の人はマイホームを購入するというわけです。
しかしマイホームを購入するという習慣、割と新しい習慣であることをご存知でしたか? 実は明治時代、大正時代頃まで、一般の人がマイホームを購入するという事は珍しく、あの夏目漱石ですら賃貸物件(その頃は借家と言った)に住んでいたそうです。
いったいいつ頃から、どんな経緯でマイホームを購入する習慣が一般化したのでしょうか??
ローンでマイホームを購入する習慣の基礎を築いたのは、阪急グループの生みの親、小林一三(こばやし いちぞう)という天才的なビジネスマンです。
それまで、鉄道は既に人が住んでいる街を繋いで走らせるのが当たり前でした。しかし小林一三はまだ誰も住んでいない地域に鉄道を敷く事で大きなビジネスになると考えたのです。
どういうことかと言うと、
まず、人が集まる都心部を起点にして誰も住んでいない地域へ鉄道を敷きます。次に政府と協力して沿線の誰も住んでいない土地を住宅地に整備します。そして住宅を販売します。そうすれば住宅の販売でお金を稼いだ上に、住民が鉄道を利用するようになるので鉄道での収入も増えます。まさに良い事づくめですね。
加えて、駅前にはスーパーやデパートを整備します。そうすれば住民の利便性が向上して更に家が売れ、更にスーパーやデパートで儲ける事が出来ます。1度も2度も3度も美味しいビジネスです。
この時、住宅を効率的に販売する方法が課題でした。なぜなら小林一三がこのビジネスを考えた頃は一般人が持ち家を購入するのは希でしたし、持ち家を購入出来るほどお金を持っている人はごく一部でした。
そこで銀行員の経験がある小林一三が考えたのが「住宅ローン」です。当時は住宅の販売額の2割を頭金として払い、残りを10年間月賦(月給)で払えば住宅の所有権がもらえるという仕組みでした。
住宅ローンのおかけげ、今まで夢でしか家を持てなかった一般人でも実際に家を持つ事が出来るようになり、小林一三のビジネスは大成功しました。鉄道会社、銀行、国を巻き込んだドル箱ビジネスモデルとなったのです。
戦後、この小林一三のビジネスモデルを関東に持ち込んで成功したのが東急グループです。田園都市線はその典型。田園都市線沿線の環境を見てみると、駅周辺には計画的に整備された住宅街が広がっており、主要な駅前には東急ストアが建っています。駅周辺だけでは住宅の数が限られるので、駅郊外まで宅地を広げ、東急のバスを走らせてバスでも収益が入る仕組みになっています。特に、たまプラーザより中央林間側の地域ではこの傾向が顕著です。
東急グループには東急リバブルのような不動産部門があります。鉄道会社なのに不動産部門が盛況で、路線が通っていない場所でも東急不動産のマンションが建っているのは、マイホームと鉄道を組み合わせたビジネスで不動産ビジネスの礎を築いたからです。
このビジネスモデルは東急グループ以外にも沢山の鉄道会社が採用しました。そして、マイホームを沢山販売するために、鉄道会社、銀行、国、マスメディアが手を組んで「夢のマイホーム」と言う言葉を作り、映画やドラマを活用して「男ならマイホームを買って愛する家族を養うのが当たり前」と言うような価値観を定着させました。結果、夏目漱石の時代と違い、今では持ち家を購入する人が多数派となっています。
郊外をニュータウン化して一般人でもマイホームを買えるようにした事で、メリットはありました。綺麗な新築の家や、利便性を考えて整備された街で暮らせるので、特に子供や、専業主婦になった女性は豊かさを感じる事が出来たと思います。
半面、デメリットとして通勤時間の長時間化や満員電車によるストレスを生んでしまったと思います。
この話しから何が言いたいかと言うと、
ビジネスのために作られたマイホームという価値観を妄信し、みんなローンを組んでマイホームを買っているからと便乗するのでは無く、必要性や購入することのメリット、デメリットを自分の頭で考えて購入の判断をしたいという事です。そして、考えた結果、僕はローン組んでまでマイホームを買うのは避けたいとう結論に至っています。
まとめ
前編に書いた通り、今回挙げた、ローンを組んでマイホームを購入したくない理由は、独身で子供もいないサラリーマンの価値観です。従って、結婚したり子供が出来れば当然価値観は変わってくるはずです。なので独身サラリーマンの戯言程度に聞いていただければと思います。
ただ、築20年を超えると戸建の資産価値がゼロになったり、マイホームには固定資産税が必要だったり、マイホームを購入する習慣がビジネスモデルから生まれたのは事実です。みんなローンを組んでマイホームを購入しているからと惰性にならず、購入前に一度しっかりと吟味して頂ければ何よりです。