日本の窓はマジで時代遅れ。 日本の家が寒いと言われる理由 後編
日本の家が寒い要因、3つ目と4つ目です。
要因 その3:時代遅れのアルミサッシ
皆さんの家の窓、どんな素材でできていますか? おそらく殆どがアルミだと思いますが…
日本くらい寒くなる国で、今でもアルミサッシを普通に使っているのは日本だけって、知っていました??
実はここ数十年で、世界の窓事情は大きく変わっているのです。日本を残して…
まず、アルミという素材ですが、寒さを防ぐという点において目覚ましく不適合な素材です。熱をめちゃめちゃ伝え易いからです。
下の表を見てください。
数値は素材の熱伝導率(ワット毎メートル毎ケルビン)を示します。熱伝導率は素材の温度で変化するので、ここでは室温付近での熱伝導率を記載します。
素材 | 熱伝導率 W(m k) |
---|---|
銀 | 420 |
銅 | 398 |
アルミニウム | 236 |
ステンレス | 16.7〜20.9 |
ガラス | 1.0 |
木材 | 0.15〜0.25 |
ポリエチレン | 0.33〜0.42 |
ABS樹脂 | 0.19〜0.33 |
空気 | 0.024 |
ガラスの1.0W(m k)を基準にすると… アルミニウムの236W(m k)はめちゃくちゃ熱伝導率が高い。つまりアルミサッシは冷たい冷たい外の温度を部屋の中に沢山沢山伝えてしまいます。また反対に、暖かい部屋の温度をせっせとお外に運んでしまいます。
だからアルミサッシを多用している日本の家は、外の冷気が家の中に伝わり易く、家の温かみが外に逃げ易く、結果として寒いのです。
じゃあ世界はどうなの?
東南アジアのようにもともと暖かい地域は除き、世界的には樹脂サッシが主流になっています。アメリカやヨーロッパは当たり前で、隣国の韓国でも樹脂サッシが主流です。
気がついたら、、
「あれ、日本さん、まだアルミサッシなんて使って家の中で凍えているの? ぷぷぷっ」状態なんです。
実際に樹脂サッシのシェアはこんな感じです。
[出典]
日本・中国:樹脂サッシ普及促進委員会
アメリカ:2010/2011 U.S.National Statistical Review and Forecast
ヨーロッパ:Interconnection Consulting Group, “Windows in Europe 2005”
韓国:日本板硝子(株)調査2011年データ
———–
日本とヨーロッパ、アメリカ、韓国を比較すると、アルミサッシのシェアと樹脂サッシのシェアが逆転しているでしょ!? 世界はもう樹脂サッシの時代なんです。アルミサッシは時代遅れなんです。
北海道だけが、日本で唯一、海外並みに樹脂サッシが普及しています。
ちなみに、アメリカの約半分の州では、アルミサッシの使用が禁止されているそうです。ドイツでは犬小屋にもアルミサッシは使わないそうです。。 家の中で暮らす人間や動物の健康を守るためです。
また、断熱性が高いということは、少しのエネルギーで効率良く家を暖められるということです。実際に規制が設けられている理由の半分はこちらで、省エネによる環境保全の観点から、アルミサッシの利用が制限されているのです。
反対に、ヨーロッパやアメリカで何故こんなに樹脂サッシが普及したかというと、要因は前のページで述べた家の暖め方があります。
北欧やロシアを含め、ヨーロッパやアメリカはセントラルヒーティング(家全体を温める)が主流です。アルミサッシのように室内の暖かみを逃すサッシを使っていたら、大量のエネルギーが必要になります。過去、暖房として使うエネルギーの量を日本と比較すると、日本の3倍にも4倍にもなります。
だから、出来る限り家の断熱性を良くし、少ないエネルギーで暖かく暮らすように注力されてきたのです。
では何故、日本で樹脂サッシやヨーロッパ並みに断熱性の高い家が普及しないのでしょうか?
また、何故、住宅のセントラルヒーティングの考え方を取り入れないのでしょうか? 正直、家中どこでも暖かい方が絶対に快適なはずです。
今は世界中の暖かい家を参考にする事が出来ますし、樹脂サッシだって登場したのは1980年くらいで、普及するための時間は十分にありました。「夏旨」とはいえ、現代の家はヨーロッパや欧米を真似たようなデザインのものが多く、昔ながらの縁側と広い開口部を持つ家はあまり見かけません。
にも関わらず、なぜ日本では、家の断熱性を良くして、家中どこでも暖かい快適な生活を目指さないのでしょうか?
これは一つに、日本人が家を暖かくする気がないからとしか言えません。例えば、樹脂サッシはアルミサッシに比べると高いのです。日本だと2倍くらいの値段がします。一度付けてしまえば窓際の寒さや結露と無縁の生活が出来るのですが、寒さに文句は言えど、その克服に価値を置いていないので、ケチってアルミサッシを使うんです。
そんな、
日本人に家を暖かくする気を起こさせない、古来からの価値観、家を寒くする諸悪の根源が、、コレだと思います。
要因 その4:我慢を美徳とする日本独自の価値観
古来から、冬寒いのは当たり前で、寒さは我慢すれば良いという日本独自の価値観がありました。
枕草子に「冬はつとめて」とありますよね。「つとめて」とは早朝の事を示します。つまり清少納言は「冬は早朝がサイコー!」と言っているのです。
ご存知の通り、一番気温が低下するのは日の出前の早朝です。よりによって寒い冬の、最も寒い早朝の時間が一番だなんて、清少納言はドMだったのでしょうか!? 更に、この後の節を読むと、「雪のふりたるは、いふべきにもあらず」(= 雪が降っていたら更にサイコー!)と言っているのです。冬の、しかも雪が降っている早朝なんて、、超絶寒いですよ。清少納言はドMで確定とします。
この時代に暖をとる方法と言えば…清少納言も言っているとおり、”火鉢”です。火鉢って手の平が温まる程度で、身体全体とか、部屋を温めるような暖房器具では無いです。(一酸化炭素中毒の危険があるので、風通しの良い部屋で使わないといけません。)
”慣れ”による違いはあっても、人の身体の作りは清少納言の時代も現代も同じですから、現代の人が寒いと感じる気温は、昔の人も寒いと感じます。昔の人が冬を「我慢して」越えていた様子、分かって頂けたでしょうか。
もう一つ、2018年現在はあまり無いかもしれませんが、2000年くらいまでは、寒いのを我慢するのを美德とする文化が確実にありました。それは学校です。特に地方の公立の中学校や高校。
例えば、こんな事例はありませんでしたか??
- 動けば暖かくなると言って、体育教師がジャージの着用を認めない(何のためにジャージを買わせたんだ?)
- だらしがない! とか言って、先生が教室のストープを消したり、窓を開けてワザと教室を寒くする
- 給湯器はあるのに、冷たい水で雑巾掛けをしないといけない。
僕の通っていた高校では週一でストーブの給油が出来るのですが、灯油を沢山余らせた(つまりストーブを使っていない)クラスほど「優秀なクラス」として褒められていましたよ。この話、戦後とかじゃ無いですよ。21世紀の話ですよ!
もうこれは、確実に、寒いのを我慢することが美德だと先生が考えている証拠。冷静に考えたらただの○ホでしょ?
「寒いのを我慢するのが良い」と言ってしまったら、寒さを改善するための工夫は生まれませんよね。
だから「夏旨」で家を建てる文化とも相まって、海外に比べて日本の家は寒いのです。実際、家の断熱性で言えば、日本の新築戸建の7割近くがアメリカやヨーロッパの基準だと不適合になるらしいです。現代の新築ですよ!
ちなみにドイツでは、公共施設や個人の家を問わず、室温が16度以下になっていたら政府から管理者に行政指導が入るそうです。室温が16度を下回ると身体への悪影響が心配されるからだそうです。「だらしがない!」と言って教室を寒くした先生には行政指導が入ります。ドイツなら。
また、北海道に移り住んだ人々は、夏旨な家を建てて酷い目に遭った事を教訓にして、北欧やロシアのような暖房方法を取り入れるようになったと聞きます。我慢じゃ冬の寒さに対する解決にはならないという事です。
更に、日本には真冬に海や川に入るお祭りがあったり、寒中水泳、乾布摩擦の文化があります。しかも、これらは「良いもの」として扱われていますよね。このような文化が残っているのは、日本人に「寒さを我慢するのは美德」という価値観が無意識的に残っているからです。
と、いうわけで、日本の「寒いのを我慢するのが美德」という価値観は根強く、家造りに影響を及ぼし、寒い家を量産し、ロシア人を寒いと言わしめる、最も根本的な要因だと考えられます。
観点を変えると、寒いのを我慢すれば良いだけの問題でもありません。
寒いのを我慢して暖房を使わないのなら良いですが、実際は使います。そうすると、断熱性の低い日本の家は暖房の暖かみをどんどん外に放出してしまうので、断熱性の高いアメリカやヨーロッパの家に比べて余分にエネルギーが必要になります。
つまり、燃費の悪い車と同じです。エネルギーのムダ使いなんです。
省エネルギーをグローバル規模で「良し」とする時代、、ケチってアルミサッシだらけの燃費の悪い家を建て、浮いたお金でハイブリットカーを買ってエコ気分に浸っているのは日本人くらいでしょう。
最後に
アメリカやヨーロッパのような、断熱性の高い家を東京に建てたとします。そうしたら冬は暖かく過ごせるけど、夏は反対に暑くて耐えられないんじゃないかと思いませんか?
しかし、その点は問題ありません。
断熱性が高いと言うことは、外の暑さが家の中に伝わりにくく、家の中の涼しさが外に逃げにくいという事です。家の中の風通しは古来からの日本の家に比べると悪いと思いますが、現代の冷房技術を持ってすれば、涼しく快適に過ごす事ができます。断熱性が高いので一旦冷やしてしまえば涼しさが長く持続します。かから断熱性の低い家に比べて冷房費を節約できるのです。