不都合だった!? 日銀が貯蓄ゼロ世帯の割合を発表しなくなっていた
ざっくり言うと
- 金融広報中央委員会が家計の金融行動に関する世論調査を毎年行っている
- 調査項目に金融資産非保有世帯比率のデータがあり、実質的に日本における貯金ゼロの世帯の割合を表している
- 2018年分の調査以降、金融資産非保有世帯比率が公表されておらず理由も不明である
「家計の金融行動に関する世論調査」を読んでみよう
このブログを見ている方はきっと自分の貯金や他人の貯金が幾らくらいあるのか気になる事でしょう。そんな方にとって有益な情報を発信しているのが「金融広報中央委員会」という組織です。日本銀行情報サービス局に置かれている組織なので事実上は日銀です。
毎年「家計の金融行動に関する世論調査」という統計レポートを発表しており、国民の年収や金融資産の保有状況についてかなり細かく纏められています。
レポートの中に「金融資産非保有世帯比率」という項目あります。文字通り貯金を含む金融資産を保有していない世帯の割合が掲載されています。つまり実質的に貯金ゼロ世帯の割合を毎年公表しています。この「金融資産非保有世帯比率」が今回のテーマです。
2018年から貯金ゼロ世帯の割合を公表しなくなった
理由は分かりませんが2018年分のレポート(発表は2019年)から金融資産非保有世帯比率の項目が無くなり、代わりに「金融商品を「いずれも保有していない」と回答した世帯の比率」という項目が増えました。
一見すると項目名だけが変わった印象を受けますが、2017年分まで30%代だった数値が2018年分は1.6%になっているので、明らかに計算で使うデータや計算方法が変わっています。
更に、2017年分のレポートまでは「2.金融資産の有無」となっていた章が2018年分のレポートからは「2.金融資産保有世帯の金融資産保有状況」となりました。つまり貯金ゼロ世帯の割合の公表が中止され、事実上、調査対象からも外されたと言えます。気になる方は実際にレポートを見てください。
2016年分
2017年分
2018年分
※注:これらは2人以上世帯に関するレポートです
なぜ貯金ゼロ世帯を発表しなくなったのか?
申し訳ないですが真実は分かりません。ただ2013年以降、経済が成長しているという政府の発表とは裏腹に金融資産非保有世帯比率は30%前後でほぼ一定の推移(※注:2人以上世帯)となっているため、その辺りを加味して「止めよう」という判断になったのかもしれません。あくまで憶測です。
ちなみに金融資産非保有世帯比率(貯金ゼロ世帯の割合)は2人以上世帯より単身世帯の方が高いです。最後に2017年分のレポートで公表されている金融資産非保有世帯比率をそれぞれ掲載します。
単身世帯
※「家計の金融行動に関する世論調査」[単身世帯調査] (2017年) より
2人以上世帯
※「家計の金融行動に関する世論調査」[二人以上世帯調査] (2017年) より
2020/4/29 追記
2017年まで使われていた調査書の設問を確認すると、金融資産無しと答えた人に対して金融機関の口座の有無や残高を質問しています。2017年の単純集計データによると、金融資産無しと答えたにも関わらず金融機関の口座に残高ありと答えた人が51.8%存在します。恐らく、日々の生活費も金融資産に含めて考えた人と、含めなかった人で差が出たのでは無いかと思います。どちらにしても答える方の認識で答えに影響が出やすい設問だと言えます。
金融広報中央委員会の説明によると、2018年以降の調査書では
a.問1(b)で10(いずれも保有していない)を選択した世帯と、b.問1(b)で1(預貯金)のみを選択し、問2(a)で1(預貯金の合計残高)の「うち運用または将来の備え」がゼロないし無回答の世帯をそれぞれ「金融資産を保有していない世帯」(金融資産非保有世帯)としている
だそうです。設問等の構成は2019年の単純集計データを見て頂くと分かります。
新しい算出方法で計測した貯金ゼロ世帯の割合は時系列データ(昭和38年から令和元年まで)で公開されているhistn21901.xlsxには記載があります。
Excelファイルのシート2を見ると、基準は変わったものの項目としては残っています。
https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/futari/2019/hist.html
「単純集計データ」に実際の調査票と結果が載っていますが、「金融資産を保有していない かつ 口座を保有していて、現在、残高がある」になるようなわかりにくい設問だったのを見直したのではないかと。
https://www.shiruporuto.jp/public/data/movie/yoron/futari/2017/
ご指摘頂き大変ありがとうございます。
確かに2017年の単純集計データを見ると、金融資産無しと答えたにも関わらず口座に残高がある人が51.8%存在し、金融資産に預金が含まれると考えるととても違和感があります。ですのでご指摘の通り設問をわかりやすく修正したというのが真相では無いかと思うに至りました。記事に補足説明を追記いたします。