[若者の車離れ] 納得の理由。本当は車が若者から離れていた…
「若者のクルマ離れ」という言葉があります。
昔の時代に比べてクルマに興味を持ったり、クルマを購入する若い人が減ったという事をさします。
若者のクルマ離れの理由は諸説ありますが、
僕は日本の経済や雇用形態が若者にクルマを買えなくしていると思う訳です。
非正規雇用枠の拡大や不景気を理由にした賃金カット、増税の影響で若者が貧乏になる一方。
にも関わらず、クルマの方は新車が出る度に値上げされている訳です。
だから若者はクルマを持ちたくてもクルマの方が若者から離れている訳です。
そこで、次のような前提と仮説を置いて、イナゾウの説を検証してみようと思います。
前提1:「若者のクルマ離れ」の若者とは、18歳~28歳辺りを示す(自動車運転免許が取得でき、就職やアルバイト等で収入がある)
前提2:「若者のクルマ離れ」とは、団塊世代、バブル世代、団塊ジュニア世代が18歳~28歳だった頃と比較した言葉である(wikipediaより)
仮説:若者の大多数を締める給与所得者の平均年収に対する相対的な車の価格は、団塊世代/バブル世代/団塊ジュニア世代と比較して高額になっている。
まずは世代毎の平均年収を比較
団塊世代/バブル世代/団塊ジュニア世代が若者だった頃、そして「若者のクルマ離れ」と言われる現代について、給与所得者の平均年収を比較してみます。
団塊世代が若者だった頃の平均年収:182万円(1974年)
バブル世代が若者だった頃の平均年収:402万円(1989年)
団塊ジュニア世代が若者だった頃の平均年収:455万円(1994年)
現代の平均年収:420万円(2016)
1974年から1989年の15年間に、平均年収が2倍以上増えています。
その後、90年代中盤をピークに現代まで徐々に平均年収は減少しています。
1989年の402万円から2016年の420万円まで、27年間は増減はあれど、1989年以前までと比べると緩やかな変化と言えます。
もし1989年当時と2017年で車の価格が大きく上昇していれば仮説は正しく、給料と同じ程度に横並びならば仮説は間違いという事になります。
そこで、年代毎の車の価格を調べてみました。
車の価格を比較
全ての車の価格を調査するのは難しいので、誰もが聞いた事のあるような、有名かつ歴史のある車種について価格を調べました。
そして、その年代の平均年収に対するクルマの価格の割合も計算しました。値が大きいほど収入に対する相対的な価格が高額で、購入に対する金銭的なハードルが高いことを示します。
トヨタ カローラ
言わずと知れた名車。なんと1960年代に登場し、現行モデルで11代目となります。
世代 | 若者だった頃の年代 | 車の価格 | 平均年収に対するクルマの価格 |
団塊世代 | 70年代前半 | 59万円(2代目カローラ) | 0.29倍 |
バブル世代 | 80年代後半 | 117万2000円(6代目カローラ) | 0.29倍 |
団塊ジュニア世代 | 90年代前半 | 139万8000円(7代目カローラ) | 0.31倍 |
現代 | 2017年 | 208万9000円(11代目カローラ) | 0.50倍 |
2代目カローラが59万円! 今の物価から考えると夢のように安い価格ですね。。
バブル世代が若者だった頃の80年代後半~現代を比較すると、年収の変化は402万円→420万円に対し、クルマの価格は117.2万円→208.9万円と、2倍近く高価になっています。この数字を見ると、仮説は正しいと言えそうです。
トヨタ クラウン
こちらも言わずと知れた名車。「いつかはクラウン」という言葉が流行ったように、昭和の時代はサラリーマンにとって憧れの対象。成功者の象徴と言えるようなクルマでした。
世代 | 若者だった頃の年代 | 車の価格 | 平均年収に対するクルマの価格 |
団塊世代 | 70年代前半 | データ無し | |
バブル世代 | 80年代後半 | 243万円(8代目クラウン) | 0.60倍 |
団塊ジュニア世代 | 90年代前半 | 285万8000円(9代目クラウン) | 0.63倍 |
現代 | 2017年 | 508万2000円(14代目クラウン) | 1.21倍 |
価格は全グレードの平均値を取っています。さすがはクラウン。カローラに比べると、とても高いです…
バブル世代が若者だった頃の80年代後半~現代を比較すると、車の価格は243万円→508.2万円と、なんと2倍以上高価になっています。
平均年収が今より高い455万円だった90年代前半と比較しても、285.8万円→508.2万円と、2倍近く高価になっています。
以上より、クラウンについても仮説を裏付けるデータとなりました。
スバル レガシィ
クラウンやカローラと比較すると歴史は短いですが、クルマ好きなら必ず知っている名車。80年代後半にスバル レオーネの後継車として登場し、現在はレヴォーグに名前を変えて販売されています。
世代 | 若者だった頃の年代 | 車の価格 | 平均年収に対するクルマの価格 |
団塊世代 | 70年代前半 | データ無し | |
バブル世代 | 80年代後半 | 217万9000円(初代) | 0.54倍 |
団塊ジュニア世代 | 90年代前半 | 259万8000円(2代目) | 0.57倍 |
現代 | 2017年 | 344万7000円(初代レヴォーグ) | 0.82倍 |
予想通り平均年収がたいして変わらない(どころか90年から今まで下がっている)にも関わらず、クルマの価格は順調に上がっています。
BMW 3シリーズ
輸入車の価格も調べました。
80年代後半に「六本木のカローラ」と言われたBMW 3シリーズです。
世代 | 若者だった頃の年代 | 車の価格 | 平均年収に対するクルマの価格 |
団塊世代 | 70年代前半 | データ無し | |
バブル世代 | 80年代後半 | 460万3000円(E30) | 1.15倍 |
団塊ジュニア世代 | 90年代前半 | 475万円(E36) | 1.04倍 |
現代 | 2017年 | 582万2000円() | 1.39倍 |
BMW高っか! 全年代でカローラどころかクラウンよりも遥かに高い。
そして80年代後半~現代で更に高くなっている… クラウンのように2倍にはなっていませんが、1.3倍くらい高価にはなっています。
ここからは、もっと若者が買えそうなコンパクトーや軽自動車を見ていきましょう。
ホンダ フィット
続いて、若者をターゲットとしたコンパクトカー。初代がバカ売れしたホンダ フィットです。
2000年代に登場した比較的歴史の浅いクルマなので、世代間の価格比較はできません。
年代 | 車の価格 ※全グレードの平均 |
2000年代前半 | 139万9000円(初代) |
現在 | 190万9000円(3代目) |
15年程の間に30%以上値上がりしています。この間、平均年収は逆に下がっているので、若い層をターゲットにしていたフィットも、だんだん手に届きにくいクルマになっているということです。
スズキ ワゴンR
軽自動車の代名詞とも言えるワゴンR。既に登場から20年以上の歴史がある名車です。
年代 | 車の価格 ※全グレードの平均 | 平均年収に対するクルマの価格 |
90年代前半 | 113万2000円(初代) | 0.25倍 |
現在 | 146万7000円(3代目) | 0.35倍 |
こちらも30%程度値上げしています。
ここまで、紹介した全ての車種が値上がりしています。しかも、平均年収がピークを迎えていた1994年頃と比べても、軒並み30%以上の値上げです。
フェラーリ
最後に、バブル時代は人気すぎてお金があっても買えなかった名門スポーツカー、フェラーリの価格。
世代 | 若者だった頃の年代 | 車の価格 | 平均年収に対するクルマの価格 |
バブル世代 | 80年代後半 | 1650万円(F348) | 4.10倍 |
団塊ジュニア世代 | 90年代前半 | 1550万円(F355) | 3.41倍 |
現在 | 2017年 | 3070万円(F488 GTB) | 7.31倍 |
フェラーリも90年代から現在にかけて大幅値上げ。2倍くらいになっています。
まとめ
今回は、以下のような前提と仮説を置いて、仮説の正しさを検証してみました。
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前提1:「若者のクルマ離れ」の若者とは、18歳~28歳辺りを示す(自動車運転免許が取得でき、就職やアルバイト等で収入がある)
前提2:「若者のクルマ離れ」とは、団塊世代、バブル世代、団塊ジュニア世代が18歳~28歳だった頃と比較した言葉である(wikipediaより)
仮説:若者の大多数を締める給与所得者の平均年収に対する相対的な車の価格は、団塊世代/バブル世代/団塊ジュニア世代と比較して高額になっている。
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結果
日本車から輸入車、大衆車から高級車、軽自動車からスポーツカーまで、年代ごとのクルマの価格を調べてみましたが、全ての車種で年代が進むにつれ値上がりしていることが分かりました。しかも、最も平均年収の高かった90年代と比較しても軒並み30%以上、中には2倍の価格になっているクルマもありました。
価格に合わせて平均年収に対する相対的な価格も高額になっており、過去の年代と比較して現代はクルマを購入する際の金銭的なハードルが明らかに高いです。
以上から、仮説は正しく、
若者のクルマ離れはクルマの値段が高くなったのが要因である
クルマの方から若者離れをしている…
最後に、なぜ平均年収は下がっているのにクルマは値上がりしているのでしょうか!?
理由は2つあると思います。
1つは、クルマが高機能化していること。例えば、90年代のクルマにはなかった自動ブレーキやハイブリットシステム等の装置を有する車種が増えています。
2つ目は、収入格差が広がっていると言われている今、メーカーがターゲットの絞り込みをしていること。例えば、クラウンであれば輸入車を好んで買っていたような比較的裕福な層。収入に関わらず誰もが買える安い車を薄利で多売をするよりも、高くても買ってくれる層に合わせたモデルを設定し、販売台数は減っても利益率で儲ける戦略なのかもしれません。
また、環境や安全性を配慮した装置の搭載が求められる(つまりクルマの部品点数が増える)なか、誰もが買える安い車を作ることは、既に不可能なのかもしれません。
3つ目は、日本が相対的に貧しくなっていること。
特にBMWのような輸入車の場合、初めから日本市場を意識した価格設定で開発するとは考えられませんし、日本のメーカーも海外での売り上げ比率を伸ばしています。海外の人たちが日本人より相対的に裕福になれば、それに合わせて輸入車や海外輸出をしている日本車の価格も上昇します。
若者とクルマの関係…
単なる「若者の〇〇離れ」で片付けず、経済政策を見直す上での一つの指標にすべきかもしれません。